愛猫の声が突然かすれたり、出なくなったりすると心配になりますよね。
猫の声枯れとは、通常の鳴き声が出せなくなる状態のことです。人間の声枯れと同じように、猫も声帯に負担がかかったり、炎症を起こしたりすると、いつもの元気な「ニャー」という声が出せなくなることがあります。
声枯れの症状は様々です。軽度の場合は、少しかすれた声になるだけですが、重度になると完全に声が出なくなり、口を開けても無声の動きだけになることもあります。また、声の調子が変わったり、いつもより高い声や低い声になったりすることもあります。
声枯れに気づくポイントとしては、以下のような変化が見られます。
まず、鳴き声の音量が小さくなります。いつもは朝の餌やりで元気よく鳴いていた猫ちゃんが、急に小さな声しか出せなくなったら要注意です。次に、声質の変化です。かすれた声や、ガラガラとした声になることがあります。そして、鳴こうとする努力が見られるのに声が出ない場合は、より深刻な状態かもしれません。
原因分類 | 詳細 | 対処・アドバイス |
---|---|---|
🔹生理的・一時的な原因 | ・寝起きの一時的な声枯れ ・鳴きすぎによる声帯疲労 ・未避妊猫の発情期の鳴きすぎ | 安静にして様子を見る。室内加湿が有効。 |
🔸ストレス・環境変化 | ・引越し、同居ペットの追加、留守番が長いなど | 環境改善・ストレス軽減(静かな場所の提供など) |
⚠️ 病気の可能性 | ・猫風邪(ヘルペス・カリシウイルス) ・咽頭炎、喉頭炎、気管虚脱 ・腫瘍(ポリープやがん) ・甲状腺機能亢進症 ・喉頭麻痺・誤嚥性肺炎リスク | 元気・食欲・呼吸状態に異常があれば即病院へ。動画や音声記録が診察に有効。 |
🧪 手術や医療処置後の一時的な影響 | ・避妊・去勢手術後の気管チューブによる一時的な炎症 | 数日で治まるが、長引くようなら相談を。 |
🐾 子猫の場合 | ・まだ鳴き慣れていないため発声がうまくできない | 生理的なもの。体調に変化がなければ心配なし。 |
猫は本来、声を使ってコミュニケーションをとる動物です。特に飼い主さんとの関係では、鳴き声で要求や感情を伝えることが多いので、声枯れは猫にとってストレスになることもあります。また、複数の猫を飼っているご家庭では、猫同士のコミュニケーションにも支障をきたす可能性があります。
猫の声枯れは一時的なものから、より深刻な健康問題の兆候まで、様々な原因で起こりえます。次の章では、その具体的な原因について詳しく見ていきましょう。
声枯れの主な原因

猫の声枯れには様々な原因がありますが、主に以下の3つが考えられます。それぞれの原因を理解することで、適切な対応ができるようになりますよ。
過度な鳴き声による声帯の疲労
猫が長時間鳴き続けると、人間と同じように声帯に負担がかかります。特に、新しい環境に慣れていない時や、発情期の猫は通常よりも頻繁に、そして大きな声で鳴くことがあります。例えば、お留守番中にずっと鳴いていたり、窓の外に見える野良猫に反応して興奮状態が続いたりすると、声帯が疲れてしまうのです。
うちの茶トラ猫のタマは、私が旅行から帰ってきた時に、嬉しさのあまり30分以上も大きな声で鳴き続け、翌日には声がかすれていました。このように一時的な声枯れは、声帯の休息で回復することが多いです。
上気道感染症などの病気
猫風邪(上部気道感染症)は、声枯れの一般的な原因です。ヘルペスウイルスやカリシウイルスなどの感染により、喉の炎症や粘膜の腫れが生じると、正常に声が出せなくなることがあります。この場合、声枯れだけでなく、くしゃみ、鼻水、目やに、食欲不振などの症状も見られることが多いです。
また、慢性的な咽頭炎や喉頭炎も声枯れの原因となります。特に高齢の猫では、免疫力の低下により感染症にかかりやすくなるため、注意が必要です。
異物や腫瘍による物理的な障害
猫が小さな異物(毛玉や植物の破片など)を喉に詰まらせると、声帯の動きが妨げられて声が出にくくなることがあります。特に好奇心旺盛な若い猫は、様々なものを口にする傾向があるため、こうした事故が起こりやすいです。
また、高齢の猫では喉の領域に腫瘍ができることもあります。腫瘍が声帯や周辺組織を圧迫すると、声質の変化や声枯れが生じます。このような場合は、声枯れが徐々に進行し、時間の経過とともに悪化することが特徴です。
さらに、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患も、猫の声に影響を与えることがあります。特に中高年の猫に多いこの病気では、声質の変化が見られることがあります。
これらの原因を知ることで、愛猫の声枯れに気づいたときに、どのような可能性があるのかを考える手がかりになります。次に、猫の声枯れに対してどのように対処すればよいのかについて見ていきましょう。

猫の声枯れについてどのように対処すればよいか?
愛猫の声枯れに気づいたら、まずは落ち着いて状況を観察しましょう。声枯れの原因によって対処法が異なりますので、以下のポイントを参考にしてください。
家庭でできる対処法
単純な声帯の疲労が原因の場合は、猫に静かな環境と十分な休息を与えることが大切です。鳴きすぎによる声枯れなら、数日間の安静で回復することがほとんどです。部屋の湿度を適切に保つことも効果的です。加湿器を使用したり、お風呂場のドアを少し開けておいたりして、乾燥から喉を守りましょう。
水分補給も重要なポイントです。新鮮な水を常に用意し、水を飲む習慣がない猫には、少量の水で薄めたキャットミルクや猫用スープを与えると良いでしょう。また、ストレスが原因と思われる場合は、フェロモン製品(フェリウェイなど)を使用して、猫をリラックスさせる環境づくりを心がけてください。
獣医師に相談すべき症状
次のような場合は、自宅での経過観察ではなく、すぐに獣医師に相談することをお勧めします。
声枯れが3日以上続く場合は、単なる疲労ではない可能性があります。また、声枯れと同時に食欲不振や元気のなさが見られる場合も要注意です。くしゃみや鼻水、目やになどの症状を伴う場合は、上気道感染症の可能性が高いため、早めの受診が必要です。
呼吸が苦しそう、口を開けて呼吸している、呼吸音が荒いなどの症状がある場合は緊急事態です。すぐに動物病院へ連れて行きましょう。また、急に声が出なくなり、のどを痛がるような仕草(頻繁に嚥下動作をする、首を伸ばすなど)が見られる場合は、異物が詰まっている可能性があるため、早急な対応が必要です。
獣医師の診察では、喉の視診や聴診、必要に応じてレントゲン検査や血液検査が行われます。原因に応じた適切な治療(抗生物質の投与、抗炎症剤の処方など)が行われますので、獣医師の指示に従いましょう。
声枯れは猫の体調変化のサインである場合が多いです。愛猫の普段の様子をよく知っておくことで、異変にすぐ気づけるようになりますよ。

猫の声枯れ予防策
猫の声枯れを未然に防ぐためには、日常生活での心がけが大切です。ここでは、愛猫の喉の健康を守るための効果的な予防策をご紹介します。
まず、室内の環境管理が重要です。特に冬場は暖房による乾燥に注意しましょう。適切な湿度(50〜60%程度)を保つことで、猫の喉の粘膜が乾燥するのを防げます。加湿器を使用したり、洗濯物を室内干しするなどの工夫も効果的です。
定期的な健康診断も予防の鍵となります。年に1〜2回の健康診断で、早期に喉の異常や全身疾患を発見できることがあります。特に高齢猫では、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患も声に影響することがあるため、定期検診がより重要になります。
感染症予防のためのワクチン接種も忘れずに。猫風邪の原因となるヘルペスウイルスやカリシウイルスに対するワクチンは、上気道感染症による声枯れ予防に役立ちます。獣医師と相談しながら、適切なワクチンスケジュールを組みましょう。
猫のストレス管理も大切な予防策です。新しい家族や来客、引っ越しなど環境変化がある場合は、猫が安心できる隠れ家を用意するなど配慮が必要です。ストレスが減れば、過度な鳴き声による声帯の疲労も防げます。
また、猫が異物を誤飲しないよう、小さなおもちゃや糸、ゴム製品などは猫の手の届かない場所に保管しましょう。特に毛玉症の予防として、長毛種の猫は定期的なブラッシングが効果的です。

猫の声枯れについてのまとめ
猫の声枯れは、単なる一時的な症状から深刻な健康問題のサインまで、様々な原因で起こり得ることをご紹介しました。
大切なのは、愛猫の普段の様子をよく知り、変化に気づいたら適切に対応することです。
多くの場合、鳴きすぎによる声枯れは数日の休息で回復しますが、他の症状を伴う場合や長引く場合は、獣医師への相談が必要です。猫は痛みや不調を隠す習性があるため、声の変化は体調不良の重要なサインかもしれません。愛猫の小さな変化も見逃さない観察力を養いましょう。
日々の予防策として、適切な湿度管理、ストレスの少ない環境づくり、定期的な健康診断とワクチン接種を心がけることが大切です。これらの取り組みは、声枯れだけでなく、多くの健康問題の予防にもつながります。
猫と人間の絆は言葉を超えたものですが、猫の鳴き声はその関係の中で重要なコミュニケーション手段です。愛猫の声を守ることは、健康を守ることでもあります。心配なことがあれば、迷わず獣医師に相談してください。あなたの愛情と適切なケアが、猫との幸せな時間をより長く、より豊かなものにしてくれるでしょう。
猫との生活で疑問や不安があれば、専門家に相談することも大切です。愛猫が健やかに、そして元気な声で鳴ける毎日を過ごせるよう、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。